ミンコフスキー計量

メモ

ローレンツ計量(符号が(1,n-1)の計量)は双曲空間を埋め込む空間の計量として見かけることはあるが、相対性理論においては時空の4次元空間の上のミンコフスキー計量(符号が(1,3))を考えるものらしい。ある慣性系(加速していない系)の空間の座標が (x,y,z) で時間が t のときに、計量は
ds^2=dt^2-dx^2-dy^2-dz^2
で与えられる。ここでは光速が1になるように正規化した座標を考えている。この計量を使うことで、双子のパラドックス(直観的にどうかはともかく、理論上はパラドックスではない)として有名な宇宙船で宇宙旅行して帰ってくる例について計算することができる。宇宙船は地球を速度 v で出発して、同じ速度で帰ってくるものとする。上で述べたような正規化された座標を考えているので、宇宙船は光速の v 倍で移動する。速度 v は 1 を超えない。従って宇宙船の人と地球にいる人の (t,x,y,z) 空間における軌跡は下図のようになる(それぞれ赤と青の矢印を付けた)。

ただし、地球から見た座標系を使っている。また、宇宙船は (t,x) 平面から外には出ないものとして、座標 y と z は無視している。時刻 t=t0 のとき(地球から見て)、宇宙船は折り返していることになる。往路の宇宙船から見た座標系の場合は下図のようになる。

光速不変の原理より座標系を変えても計量 ds は変わらない。2つの図において、往路の宇宙船の経路に沿って ds を積分すると、
t0 (1-v^2)^1/2=t1
という等式を得る。宇宙船が地球に戻ってきたとき、地球では時刻 t=2 t0 となっている。一方で宇宙船の時計は時刻 t=2 t1 を指し示している。つまり、往路に対応したベクトル (t0,v t0) の(計量 ds についての)長さは t1=t0 (1-v^2)^1/2 であって、復路に対応したベクトル (t0,-v t0) も同じ長さをもっている。地球と宇宙船で経過した時間の比は (1-v^2)^1/2 で与えられることになる。